THE HINOKI : interview 01

2016/10/18

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2014年、ブランドの設立とともに鳥取に移り活動をするTHE HINOKI。

自然や環境への配慮と、澄んだ現代の感覚をあわせ持つ彼らの衣服、

その背景を伺いました。

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[THE HINOKI]

 

 

 

cite’ : 自然や環境に配慮しつつ現代的な衣服はないかと考えている時に、THE HINOKIさんのことを知りました。

初めて手にした時に、まずは物質としての魅力を感じて、それからディティールに魅了され、、不思議な存在感を纏った服だなあと。どういった経緯で活動を始められたのですか?

 

THE HINOKI:それまで携わってきた事々の経験を基に、未来に向けての表現活動を行いたいと思い、2014年に活動を始めました。現在は鳥取を拠点に活動しています。

 

 

c : THE HINOKIの服は、日常着やワークウェアのようでありながら、それらをなぞった服とはどこか違うような気がします。

「都市と自然、過去と現在を行き来するような衣服。どこにも属さない豊かな感覚を与えてくれる日常着。」とDMに書きましたが、衣服としての堅実さと、時代との向き合い方に魅力を感じます。

 

H : 衣服は人類の歴史と共にすがたかたちを変えて今に至ります。その大きな流れの中で、現代の暮らしにとってたいせつな要素とは何だろう?という問いを常に掲げながら、商品ひとつずつに答えを出すようにしています。

街や自然の中でも馴染み、機能すること。人種やラインを越え、末永く着続けることについて。そうしたことも考えています。

 

 

 

 

c : 着用すると、ホッとする気持ちと洗練、その両方を身体的に感じました。

 

H : それは、天然の素材を使用しているということが大きいと思います。

洗練と呼べるかはまだわかりませんが、衣服としての美しさ同様、布と身体との距離感や、着心地の良さを追い求めています。

 

 

c : 素材の肌感とその微妙な距離感が心地よく感じられるのかも知れないですね。

生産の背景や環境など、服が作られる過程についてはいかがですか?

 

H : 昨今の様々な事象を受けて、環境や働き方に無理のない範囲でのものづくり、ということは心がけています。

例えば、極力私たちが住む土地に近いところで商品の生産をお願いしていること。それは、遠方へ荷物を送る時に生じるエネルギーの差に表れます。また、作り手の方と直接お話しをして一緒に商品を作り上げることができるのが最も良い点ですね。

 

 

 

 

c : 厳選した自然素材を使用しているとのことですが、素材選びもそういったことを踏まえて?

 

H : 安全で安心出来る背景を持ち、適正な条件によって作られる素材選びを重視しています。

 

現在、良心価格で販売される多くの商品の裏側には、厳しい労働条件で働く人々が大勢いるといわれています。大量に生産される綿花に使用する農薬によって、生産者の健康被害・土壌汚染の問題が深刻化しているとも。

 

ただ、すべてオーガニックのものを、という固い縛りは設けず、しんに良いと思う素材を選ぶようにしています。特にここ数シーズンは、国内の様々な産地で作られる職人の力の注がれた生地に着目しています。

 

 

c :  染色は人工染料と天然染料を掛け合わせているという事ですが、古来からの染色技法を踏襲しつつ、最小限の人工染料を使用することで色落ちを防ぎ、環境への負担も軽減すると伺いました。ベンガラ染めのグレーも印象的で、退色してもとても綺麗です。

 

H : 気軽に永く、天然の色合いを楽しんでいただきたいという思いから、ボタニカルダイという染色方法をとっています。

色落ちや日焼けに強く、取扱い易いということで、現代の暮らしに寄り添って開発された染色方法なのですが、主にログウッドやヒノキなどの染料を使用しています。

 ベンガラ染めは、地中から取れる成分による顔料染めで、1点1点 職人が手で染めています。グレーがかった独特の風合いが見られます。

 

 

 

 

c : ディティールも控え目ながら特徴があり、機能と装飾の関係が絶妙なバランスで成り立っているように思えます。それぞれに何か意味や由来があったりするのでしょうか?

 

H : ディティールに関しては、人の仕草や目的に沿って考えています。

そっと役に立つことと、さりげない美しさを共存させること。

結果として、まだ名前のついていないディティールになっているのではないかと思います。

 

例えば、「2つのポケット」は、胸のポケットにメモ帳を入れ、ペン専用のポケットにお気に入りのペンを挿せば、そこがその人にとっての書斎になるのではないか?という思いからつくりました。

毎シーズン、胸ポケットのバランスを少し変えたり、ポケットの中にペンポケットを見えないように配置したり、少しづつ変化しています。

 

「アーミッシュの袖」は、シャツのヒジの辺りをつまんで縫い、袖の長さを短くしたものです。

アーミッシュに関する本の中で、おさがりのシャツを着るために、そのように袖を直すことを知りました。服を手に入れることが容易くないからこそ生まれた暮らしの知恵、それがとても美しいと感じました。

その知恵をお借りし、男性用のシャツの袖をつまんで短くし、女性用のシャツに仕立てました。それは消費を目的とせず、あるものを工夫して永く使うことについての一つの答えだと思っています。父のシャツが、ほんの一折りであなたのシャツに変わるかも知れないというような、、、

 

(*アーミッシュ :アメリカ合衆国 ペンシルベニア州・中西部、カナダ オンタリオ州などに住む人々。近代文明とは距離を置き、電力や車を使用せず、牧畜・農耕による自給自足の暮らしをしている。人口 約22万人。)

 

 

 

 

c : 話は戻るのですが、自然に配慮した服と、現代性というのがどこか相反するイメージがあったのですが、個人的には、その中間の生き方を探る事に興味があります。

 

H : 同感です。これまでは、自然志向の人々は限られたコミュニティしかなかったように思うのですが、近年は食べ物を始め、オーガニックコットンやリネン、藍染めなどが、エシカルファッションという名で見直されて、多くの人々の支持を得ています。

暮らしの中に、少しずつでも、そうした背景を持つ食べ物や衣服を選択することで、ある豊かさと繋がっていられるように感じます。

 

 

c : そう考えると、「都市的」という印象は、人と自然との関係を俯瞰しながら自然に近づくバランス感覚に由来するのかも知れないですね。

 

H : 自然に還ろう、という大きなものではなく、自然と向き合うことを取り入れることを提案したいと思っています。

例えば、部屋で植物を育てることと同じように、オリーブの木のボタンがついたシャツを着るというように。

 

 

c : ひとつのボタンが、何かを変えることがあるかも知れませんしね。

ところで、もともとCOSMIC WONDERのパタンナーを務めていらっしゃったとのことですが、今の活動や制作への影響はありますか?他にも服作りのベースとなるようなものがあれば。

 

H : COSMIC WONDERでは、これからの生き方や、美の追求に対して実に多くの学びがありました。それは今も変わらず実践しています。服づくりに関していえば、服にモノ以上の価値を込めることが可能だということを教わりました。

他には、旅をすること・音楽・日々の営み、あらゆる体験に影響を受けながら制作しています。

 

 

(続)

 

 

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