E&Y 代表 松澤剛 さんへの質問(2/2)

2016/06/17

 

cite’: 以前、松澤さんに聞いた幾つかの言葉に刺激を受けてプロダクトの深みに引き込まれました。この寡黙なコレクションについて説明するのは野暮だという意味もわかるのですが、少し背景を伺えないかと思って。

 

松澤:このコレクションは、デザイナー本人の核の部分を見極め、何よりもその人らしいところを引き出すことを考えて作っています。

異常なまでの余白によって成り立つコレクションですが、私たちが美しいと思ったり、社会に対しての疑問を作品に投影して差し出す、ということが根本にあります。

出来上がったものはデザイナーの強いメッセージではあるのですが、サインだけ書いてあって、白紙のノートというか、あとはそこに全部記入していって欲しいんです。お願いだからあなたの自由にしてくださいという感覚があります。

 

 ロンドンデザインミュージアムでの展示(2015)

 

 

 

「yours」(林洋介)

松澤:消えて無くなるものを作りたいというところから始まりました。ものの不在性。ものがあふれている状況で、ものと人の関係とか、ものを所有することについて、問いかけるようなものを作りたかったんです。そこから、ちぎって燃やすとお香になるポスターのアイデアへとつながりました。

制作に関しては、ゆっくりとした速度で燃える紙を開発するのに約2年。紙の成分解析から始まって、たまたま退職した研究者に出会わなかったら多分実現しなかったと思います。

安息香(ベンゾイン)という鉱物を輸入してアルコール溶解して、紙に含浸させて、それを乾かして、、、という作業をして、この一枚の紙が出来ています。

匂いとは、気配を一瞬感じで消えてゆくものでもあるし、ハガキにしてもメモにしてもポスターにしても、、、自由な使い方をしてもらいたいなと。使っていく時間の中に所有者の時間を投影してもらえたらと思います。

 

 

 

「in  the sky」(二俣公一)

松澤:木の枝が落ちて下の枝に引っかかって生まれた偶然の状況、その危うさと美しさのバランス。それを表すのに何が一番美しいかということで、単に自然を模倣するのではなく、直線で表現したのだと思います。それはデザイナーの造形に対しての直感で、その云い切りによって成り立っています。

 

 

 

「short by short」(山部宏延)

松澤:HORIZONTALで言いたいことを、全て代弁してくれている作品です。

額を作るときに出たおがくずを額の中にしまったもので、ここに空間が内包されています。空間とか物の関係が自由であるといつも教えてくれるような深度を持ったオブジェクトです。

 

 

 

「walden」(鈴木元)

松澤:デザイナーがウォールデンの森で拾ってきた枝をかたどってクレヨンを作りました。子供が木の枝を拾って地面に絵を描く、そんな場面の想像から始まりました。

 

 

 

「blue」(森美穂子)

松澤:森さんが水とか空気をはらんだ布、水のような海のような布を作りたいというところから始まりました。その人が一番美しいとか心地よいとか、単純にそういうものが、感覚として、この微妙なバランスの中に投影されているんだと思います。

それをイメージではなくて、感覚としてどうやったら生み出せるかを考えて、このストールが生まれました。

水を掻いたときに水面に一番正しい曲線ができるじゃないですか。それは出来る限りしなやかな質感だと思って、蚕のままに近いシルクの糸を使い、ほとんど糸を整えていません。白の糸と、様々なブルーの糸とを、縦糸・緯糸でバランスを整えて質感を出し、さらに袋状にするのが難しいんです。

製造の段階で半分くらいが失敗してしまうので、再生産が難しい作品の一つです。

 

 

 

 

「third」(Max Lamb)

松澤:33%。デザイナーとメーカーと消費者の割合が33%という意味です。

組み立てる側の所有者が残りの33%埋めること、それが現代へのメッセージとしてあります。それぞれがカスタムして使ってもらえたら嬉しいですね。

 

 

 

「fil」(白木麻子)

松澤:ベルリン在住の現代アーティスト白木さんの作品です。

filとは、埋める・満たすという意味。二つのつながったバケツ、アンバランスな取っ手、底にあいた穴。その穴は、世界を覗く穴で、扱いの手立てを知る穴でもあるし、思考する仕草でもあります。

そういった細部のバランスによって、様々なことを問いかけてくるような作品です。

 

 

 

Pots(Feye Toogood)

松澤:日本ではまだあまり知られていないかもしれませんが、彫刻的な作品、ファッション、インスタレーションなど、多岐にわたる活躍をしているロンドンのデザイナーです。

世界を作るためにはひるまない、圧倒的な作業量と、文化や歴史を反映し、それを形状として言い切る強さがあります。

Potsは、萩焼の梅花皮(カイラギ)という仕上げで、注ぐという行為や、日本と英国の文化が交差するという意味も含んでいます。

 

 

 

Routine (Nina Tolstrup and Jack Mama)

松澤:物質、儀式、喜びといったキーワードが日常の中で一つになるようなイメージです。

靴ベラって生活の中で出入りする場所で使われるもので、日々の当たり前の行為が、この一つの物質によって、それが喜びであったり、使うこと自体が儀式的な何かを帯びるような。そういった全てが反映されて、彫刻ようになったプロダクトです。

 

Rule Book(尾原史和)や、Pied Piper (鈴木ユウリ)についてはあまり説明はいらないものなのかなあと思っています。彫刻的に見ることもできますし、実際に使用できないこともありません。使用する以上の何かが、そこには含まれていると思っています。

 

 

cite’ : 改めて伺うと、コンセプトということではなく、物の行間にある何かを感じていただけるような展示ができれば、と思いました。

 

松澤:ピュアな感覚、単純にその人の断片を、純度高く、美しく抽出したいという気持ちでやっていますので、言葉での理解とは別のところでまずは手にとってもらえたら嬉しいです。

 

 

cite’ :  今後もコレクションは続いていく予定ですか?

 

松澤:特に海外のデザイナーからの問い合わせも多いので、今後も受け入れていきたいと思っています。

ただ、本当にそのデザイナーのことが理解できているのか、その人の感覚が反映されているかどうかか見えてくるまでアイデアを数年単位で寝かせることもありますし、コレクション自体はゆっくりと増えていくとは思います。

そうでなければ、このコレクションの意味はなくなってくると思っています。

 

 

cite’ : 最後に何かありますか?

 

松澤:ホリゾンタルの延長線上に、世の中の様々なものが置かれるとなると、明確な用途とか機能を持ったものでさえも、違った景色に見えるようになるんじゃないかと思っています。そんな気づきを少しでも促すことができたら嬉しいです。

 

物は今までもこれからも残念ながら溢れ続けるだろうし、大きな変化は期待してないですが、小さな変化が繰り返されて、いい意味で微妙にずれていけばいいなあと思っています。

 

 

cite’ : ありがとうございました。今後も世界への美しい謎掛けや謎解きを見せてもらえるのを楽しみにしています。

 

 

 

(2015.06.15)

 

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